月ごとのアーカイブ: 10月 2019

ADULT ORIENTED INDIE ROCK

インディーミュージックが好きで80年代後半からずっと聴き続けています。NEW WAVEやネオアコは若干後追いになりますが、マッドチェスター、ブリットポップ、LO-FI、ポストロック、エレクトロニカ、エレクトロクラッシュ、ロックンロールリバイバル、シューゲイザーリバイバル、チルウェイヴ、ドリームポップなどなど生まれては消えていったり、なんとか粘り強く残ったりする様々なインディー・ムーブメントはほとんど通ってきました。別に流行に敏感とか言いたいわけでもないし、BIG LOVEやFLAKEみたいに最新の音楽を紹介する新譜中心のレコードショップでもないので、偉そうなことは言えませんが、新しいムーブメントが生まれて広がるまでの一瞬の輝きにワクワクするのは今も昔も変わりません。もちろんグランジとNIRVANAのように悲しい結末を迎えることもありますが、基本的にミーハーなのでハイプな盛り上がりも歓迎しています。もちろんPASTELSをはじめとしたグラスゴーのミュージシャンや、オリンピアを代表する老舗Kレーベルのような地に足の着いたDIYスタイルも熱烈リスペクトしています。少年ナイフのように(一度はメジャー・リリースしましたが)ずっと自分たちの力で世界中をツアーするバンドにも憧れます。また熊本のDOIT SCIENECEのように地元を離れず仕事をしながら長くインディペンデントな活動を続ける姿に勇気をもらっている人は少なくないでしょう。僕もこれまでにインディーミュージックから学んだことを少しでもフィードバックできれば、と細々と活動しているつもりです。

ただ自分の年齢もどんどん上がり、激しいのやジャングリーなやつより、メロディアスで落ち着いた音を好むようになってきました。そういう音楽をたくさん聴いていたら、ふとした時に、でもこれって結構AOR (ADULT ORIENTED ROCK) に近いものがあるよな、と気がつきました。スタジオミュージシャンを起用して、ある意味商業的だったAORと対局のスタンスのはずのインディーミュージックがどんどんサウンド的に近づいていることや、GARAGEBANDのような無料アプリの普及や機材の低価格化により、宅録でもスタジオと遜色のないハイクオリティーな仕上がりになるのが面白くて、勝手にこの手の音楽のことをADULT ORIENTED INDIE ROCK (AOIR)と呼ぶようになりました。90年代にもこの手の音楽は大好きでTERRY HALLのソロアルバムやLIGHTNING SEEDSなど、歌謡曲まで行きそうで行かないというギリギリなところでポップな音楽を、友達と「寸止めポップ」なんて呼んでいたのだけど(これも全然定着せず)、AOIRはそれよりも語感がキャッチーだし、はっきり言ってこのジャンル分け、目線は革命だな、みんなが使い出すぞ、と思ったのが2014年のこと。そして、その年のオープン記念に同名タイトルのミックスCDを作ってお客さんに配布しました。久々に聴いてみると、5年後の今の耳で考えるAOIRとは若干違いはあるものの、メロウなギターポップやインディーシンセ、チルウェイヴ、ベッドルームポップなどを繋いだ悪くない内容。だったのですが、ご存知のように定着しないどころか、自分以外は誰も知らないさみしい状況が続いております。

ただ、AOIRが廃れたかと言えばそうでもないと思うのです。16年にはツイッターで「THE 1975′SとかPRIMAL SCREAMとかUNDERWORLDの新譜は、ロックやテクノとして聴くと物足りないかもしれないけど、AORとして聴くとホント最高だから試してみるといいですよ。」とつぶやいているのですが、確かに16年リリースのI LIKE IT WHEN YOU SLEEP, FOR YOU ARE SO BEAUTIFUL YET SO UNAWARE OF IT (THE 1975’S)、CHAOSMOSIS (PRIMAL SCREAM)、BARBARA BARBARA, WE FACE A SHINING FUTURE (UNDERWORLD)どれもAOR感がある。特にTHE 1975’Sはロックとしては刺激が足りないし、ポップにしては振り切れてないな、と物足りなく感じていたのですが、AORだと思って聴くとめちゃくちゃ最高で、バンド自体も大好きになりました。

それ以降、自分が年間ベスト10に選んだものだけでも、17年PHOENIX “TI AMO”、JENS LEKMAN “LIFE WILL SEE YOU NOW”、 KOMMODE “ANALOG DANCE MUSIC” LUCKY SOUL “HARD LINES”、18年DREAMER BOY “LOVE, NOSTALGIA”、 ASTRONAUTS, ETC. “LIVING IN SYMBOL”、 RUSH WEEK “FEELS”など毎年豊作。

BLOOD ORANGEやJAMIE ISAACなどダウンビート的なクラブサウンドにもAOIRの匂いが感じられるし、THE INTERNETやそのプロデューサーでもある今をときめくSTEVE LACYをはじめKINGやNONAME、世界的に高い評価を得たSOLANGEなどソウル~ヒップホップのアーティストもAORに近づいてきている印象です。

海外からの発見もありここ数年多用されるシティポップスという括り。もちろんオリジナルのシティポップスへのリスペクトはありつつも、個人的にすべてその言葉で片付けてしまう風潮は好きではなく、若いバンドがそういったレッテルを張られてしまうのもちょっと可哀相だな、なんて思っていました。でも所謂「シティポップス」の枠では語れない、坂本慎太郎やCERO、KASHIFなどのアーティストは僕も大好きだし、上に紹介した海外のアーティストを聴くのと同じ感覚で楽しんでいます。

そして今年のトピックとしては、個人的AOIRクラシックなTERRY HALLの97年のソロセカンドLAUGHとPREFAB SPROUTの同じく97年の傑作ANDROMEDA HEIGHTSの初アナログ化。これは嬉し過ぎる事件でした。

というような与太話を硬軟取り混ぜ話せる先輩2人に別々に話したところ、どちらもとても面白がってくれました。この信頼する2人が面白がってくれるなら、なかなかイケるんじゃないの、と背中を押されてAOIR布教活動をやっていこうといろいろと模索しているところです。AOIRというひとつの切り口でヒップホップ好きが普段聴かないインディーミュージックを聴くきっかけになったり、若いインディーキッズがPREFAB SPROUTを知る機会になったり、今はあまり音楽を聴かなくなったAOR世代が再び聴く楽しさを発見する機会になれば最高です。

元々AORという言葉も日本発祥らしいし、ネオアコやFREE SOULなど日本独自の切り口で定着したジャンル分けも多く、そういう編集能力の高さは日本人の得意とするところだと思います。それらと比べるのはおこがましいですが、ADULT ORIENTED INDIE ROCKと#adultorientedindierockは素材フリーにしておきますので、どんどん使ってくださいませ。使わなくても名前だけでも憶えて帰っていただければ幸いです。

CLASSIC AOIR

LIGHTNING SEEDS / TILT (1999)

TERRY HALL / LAUGH (1997)

PHOENIX / ALPHABETICAL (2004)

THRILLS / TEENAGER (2007)

HARVARD / HAHVAHD (2011)

BRAND NEW AOIR

DREAMER BOY / LOVE, NOSTALGIA (2018)

JUST JACK / LAUGHING & CRYING (2019)

MEN I TRUST / ONCLE JAZZ (2019)

STEVE LACY / APOLLO XXI (2019)

KASHIF / BLUESONGS (2017)